さあ、世論はどう反応するか

「勝つことが一番お客さんを喜ばせる」

落合監督の考えである。それが如実に出た試合が今日である。先発の山井投手が8回まで完全。そして、9回。

岩瀬投手に継投。

予感はしていた。一点差、短期決戦、落合監督の考え方…
どこまで冷徹になれるか、そこを注目していた。

今日の展開、二つの記録がかかっていた。一つは、山井投手の完全試合、そしてもう一つは、中日の53年ぶりの優勝。人間、緊張の糸とというものは簡単に切れる。そして修復は困難を極める。今日のような試合の場合、ワンヒットが出ると記録が途切れるとともに、それは同点のランナーである。緊張が緩んだ瞬間を逃すほど、プロは甘くない。そして、その綻びは、短期決戦という形式では、流れをあっさりと変えてしまう致命傷ともなりうるのである。完全試合で勝てればいいが、もし仮にここで負けると…
流れが変わる可能性は大いにある。それを危惧したに違いない。だから、万全に万全を期すための岩瀬投入。

冒頭の考え、至極真っ当な考えである。勝たなければやはり客は入らないし、選手の年俸にも響く。今回の場合、日本一になれなかったら、やはり選手の給料に反映されないだろうし、結果的には負けたシリーズとして記憶されてしまうのだ。ある記事では、ファン無視のプロ野球という見出しが踊るかもしれない。また、非情と揶揄され、勝つためには手段を選ばないと批判されるかもしれない。しかし、勝つことで最高の喜びをプレゼントするという考え方も否定はできないと思うのだ。

今日の試合で思い出したのは、99年の日本シリーズ、ホークス対ドラゴンズの第3戦。ホークス先発の永井投手は6回までノーヒットピッチング。ノーヒット・ノーランの可能性があった。しかし、7回には、篠原投手に継投となり、ヒットを打たれ、継投でのノーヒットの夢は潰えた。しかし、当時高校3年だった私は、非常に残念だったものの、納得はした。なぜなら、その試合にホークスは勝ったのだ。

ファンやマスコミは身勝手なものだ。今日の試合、仮にあそこで続投させて打たれて負け、シリーズで逆転負けを喫した場合、どう言うだろう?間違いなく、あそこで続投させたから負けた、ポイントになったのはあそこだ、冷徹になれなかったから負けた、という言い方をしてくるはずである。

ただ、もちろん、自分自身わがままで身勝手な一野球ファンである。記録達成を見たかったのもたしかであり、山井投手がかわいそうだ、という気持ちも一方である。このような状況でなければ、という残念な気持ちもある。そして、山井投手は納得して降板したのか、という疑問もある。しかし、何はともあれ勝ったのだ。勝利至上主義は面白みに欠けてあまり好きにはなれないが、しかし、プロは、勝って魅せてなんぼ、という世界でもある。今回の采配を世論はどう取り上げるか、楽しみである。

なにはともあれ、ドラゴンズ、日本一おめでとう!